若竹 presents
トワイライト勉強会
Twilight Study meeting

小さい机の小さい世界

サンジの様子がいつもと違っていた。ゾロは大ざっぱではあるが鈍い訳ではない。
サンジがいつもより不機嫌で何かに動揺している事に気付いていた。
その態度から、自分に何か隠し事をしていると感じ取っていたが
詮索するのも面倒で、大して気にも留めずに腰を下ろした。
いつもの場所、勉強会の定位置に。
そのいつも通りの行動もサンジにとっては事件現場を再現されているようで
ゾロの行動の何もかもが衝撃だった。
言葉、行動、感情をどうコントロールしてよいかわからないまま
呆然と立ちつくすサンジとは異なり、ゾロは欠伸などしながら
カバンからノートや問題集を小机に出していた。

(「昨日の続き」って言ってたから、物理だな。)
ゾロは、物理の問題集を出し昨日解いていたページを開けた。
(…そう言えば、昨日面白いことがあったなぁ…)と、ようやくゾロは昨日の事件に思い及んだ。

依然として勘違いしたままのサンジではあるが、少しずつ落ち着きを取り戻して
とにかくゾロの様子を見ようと、平静を装いつつ勉強の準備を始めた。
といっても、もはや物理の問題集を見るのさえも恥ずかしい気持ちになっていたのだが。

形だけはいつもの勉強会の格好になった。ゾロは相変わらず静かなままだ。
ゾロの様子を見る事が最重要事項であるサンジにとって、物理の問題を解く事は
全然重要ではないので、問題が解けるわけが無い。ただでさえ苦手であるのに。
サンジは頭の中がひっくり返ってしまって、ただボーっと問題集を眺めるだけであった。
サンジが全く勉強する気が無い事に気付いたゾロが、声をかけた。

「なぁ。昨日のアレ…。」

!!!!!!!!
(来たーーーーーーっ!!!!)

サンジは全身が逆立つような緊張感を感じながらゾロの言葉の続きを聞いた。

「お前、昨日、全然やる気なかったけど、今日は大丈夫なのか?」

ゾロなりに心配しての優しい一言であったのが、結果的にサンジの導火線に火を点けてしまったようだ。

「はぁー?!やる気って何だよ!やる気って!!じゃあ、お前はやる気あんのかよっ!」

「別に俺はやる気なくても、お前よりできるからな。
 っていうか、お前が誘うから俺は来てるだけだろ。」

「!!!!!
 誘うって何だよ!俺がいつ誘った!!俺はただ、勉強会をしようって言ってるだけだろ!
 そんな風に誘ってねぇよ!勘違いするなっ!!」

「・・・・・お前、何言ってんだ?」

さすがのサンジもゾロとのやりとりに違和感のような物を感じてはいたが
落ち着いて話をまとめられる余裕はなかったし
まとめた所で、何だかとても嫌な結論を導き出しそうで、支離滅裂にゾロにかみつくことしか出来なかった。

「帰れ!!お前、帰れ!!」

確かに今日は勉強会をする予定では無かったのを、半ば強引にゾロがあがりこんでいた。
そしてやはりサンジはいつもと違って何かにナーバスになっていて勉強会が出来る状態では無かった。

ゾロが(今日は帰った方が良さそうだな…)と思い始めた時
うまい具合にゾロの腹が鳴った。

ぐぅ…。

「ちっくしょーっ!!仕込みか!お前のそれは仕込みか!時限装置か!!」と
八つ当たりにも聞こえる悪態をつきながら、サンジはキッチンのある1階へと下りていった。



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